トランジスタの選別ペアマッチング


はじめに

 トランジスタの選別ペアマッチングの多くは、入出力カップリングコンデンサを省いた差動増幅回路のアンプで良く使われる手法で、出力のDCをキャンセルさせる回路の調整範囲内に、アンプの出力特性を収めるためのものです。

この回路の場合はチャンネル毎のペア選別は必須です。▶NFB回路とは(リンク)

 

M-01の回路の場合はわざわざ選別ペアマッチングを行なわなくても不具合(壊す/壊れる)は生じません。

 

 M-01で選別ペアマッチングをする意図は、入力段→電圧増幅段→電流増幅段とそれぞれの信号増幅ステージ毎に、左右チャンネルに同じ特性の部品を割り当て、両チャンネルの増幅特性を完全に一致させるためにあります。

 

 増幅特性が左右で揃うと再生音を聴いた時の違和感(ヘッドホンが鳴ってる感じ)が減ります。

しかし音色や~感といったはっきりと聞こえる部分はほとんど変わりません。

なのでブラインドテストをしても違いは分からないと思います。

しかし長時間聴いていると左右の特性を揃えたものの方が明らかの良いので、M-01は選別ペアマッチングをしています。


J-FETの選別方法

 図はJ-FETのID-VGS曲線の一例を示します。IDとはD(ドレイン)の電流(I)で、VGSとはG(ゲート)とS(ソース)間の電圧(V)です。曲線の黄色と緑線はJ-FETの特性上下限を示し、上限と下限では全く別物と言える位の差がある事が分かります。

 

 一般的な J-FETの選別方法はIDSSの管理になります。IDSSとはDとSをショート(S)させた時に流れる電流(I)の事で、電源をDに+極、Sにー極を接続し、+極とD間の電流を測定します。

IDSS管理は回路の動作点から離れたポイントを管理するため、ピンクの曲線のものが有ったとしても発見出来ません。

 

 もう一つの選別方法はVGSの管理になります。VGSとはDS間に測定用の定電流を流した時のGS間の電圧(V)で、テスターの+をGに、ーをSに当てて測定します。測定電流値は製品で使用する値に近い設定にします。選別の目的がDCキャンセル回路の調整範囲内でしたらこの方法が最適です。但しVGS管理では青の曲線が有った場合は発見出来ません。

 

 赤と青の曲線の傾きが増幅率になるので、J-FETの特性を揃えるなら IDSSとVGSの2点管理が必要になる事が分かります。

 

 ここまで測定の事を書いてきましたが、まずは測定時の温度管理をしないと測定結果がまるで違うものになるという事を付け加えておきます。温度管理のポイントは、測定時の室温やJ-FETの保管温度等が思い付きますが、ばらつき要素として最も大きいのが J-FETを測定するために触れる行為になります。体温は測定結果が全て台無しになる程インパクトがありますので、ご自身で測定する場合はお気を付けください。

 

 M-01は 上記温度管理を徹底した上で選別ロット毎にIDSS管理とVGS管理を実施しています。



トランジスタの選別方法

 図はトランジスタのhFE - Ic曲線の一例を示します。hFEとは電源の+極をC(コレクタ)、-極をE(エミッタ)に接続し、B(ベース)に電流(IB)を与えた時に電源の+極とCの間に流れる電流(IC)を測定し、IBとICの比を表したものです。

 曲線を見ると、ICが変化してもhFEはほぼ横ばい(右端除く)なので、IBとICは比例関係にあり、IB-IC特性は線形である事が分かります。

 

 一般的なトランジスタの選別方法はhFE管理そのもので、M-01も選別ロット毎にhFEを測定しています。J-FET同様に触れると値が変わりますので慎重に測定します。



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