歪率の正式名称は、JEITA CP-1105の定義によると「総合ひずみ率」または「THD+N」になります(THD+N = Total Harmonic Distortion Plus Noise)。計算式は以下になります。
下図は、横軸(周波数)、縦軸(信号レベル)の分布を示します。入力信号ゼロ時はノイズのみで、信号レベルを上げて行くと基本波が現れ、更に信号レベルを上げて行くと2次以降の高調波が現れて来ます。
信号レベルゼロ
通常の信号レベル
過大信号レベル
歪率(THD)を簡単に説明すると、2次以降の高調波の合計と基本波の比率になります。また+Nの「N」はノイズレベルの事で、THD+Nはノイズレベル込みの値となります。
測定は基本波からN次高調波全部込みの信号レベルと、基本波だけ除去するフィルターを通した信号レベルを比較して算出します。測定結果は、基本波の除去具合と測定周波数帯域の広さで大きく変わります。
表示方法はJEITA規格の場合、下記が明記されていて完璧になります。
例「総合ひずみ率 0.02%(INジャック , 1kHz , 出力1mW , 32Ω , LPF80kHz , JEITA)」の場合の読み方は、INジャックから1kHzの信号を入力し、32Ω負荷で出力1mWの時に、80kHzのローパスフィルター(高周波カット)を通し、その他の設定はJEITA規格に準じて測定したノイズ込みの歪率は0.02%です、と解釈出来ます。
カッコ内の測定条件、測定基準を表示する / しないはメーカーが決めます。
カタログスペックを確認する時は、出力、負荷、ローパスフィルターのカットオフ周波数(記載の無い場合はフィルター無しで測定、もしくはメーカー基準により非表示)は意識しておいた方が良いと思います。
以下はM-01の1kHz 16Ω負荷時のローパスフィルターのカットオフ周波数違いの歪率特性図(実測値)となります。負荷違いの歪率特性図は、TEST RESULT(サンプル)をご確認ください。
グラフが線形に右下がりになっている領域は、基本波のレベルがノイズフロアよりも低くノイズを測定してしまっている状態です。ローパスフィルターの有無でノイズを減らせるので、同じアンプでも測定方法を変えるとTHD+Nの表示を以下の様に良く見せる事が出来ます。
M-01は、1kHz , 1mW , 16/32/300Ω , フィルター無し , INジャック、JEITA表示無し(一番悪く見える記載方法)をカタログスペックと定めています。
参考に各 THD+N 毎の波形を紹介します。
黄:入力波形(低歪信号)
青:歪んだ出力波形
THD+N 0.07%
THD+N 0.7%
THD+N 10%
波形は正弦波(サインカーブ)なので、”ピー”音です。
THD+N 10%になるとピークが潰れている事がはっきり分かりますが、屋外PA等で良く耳にする バリバリ音(クリップノイズ)とは違い、”ピー”に濁点が混ざった音だと思います(試した事が無いので、近日中に確認します)。